自宅にある道具でコーヒー焙煎をしてみよう

こんにちはサトです!

当店では焼きたてコーヒーを全国にお届けしていますが、ときどき焙煎をやってみたいというお客様にも出会います。

コーヒーを焙煎するってどんなイメージでしょうか?

「焙煎って難しそう…」「専用の機械が必要でしょ?」と思っていませんか?

実は、コーヒー生豆があれば、自宅にあるフライパンを使って誰でも簡単に焙煎を楽しめます!

今回は、おうち焙煎の魅力とコツ、そして家庭用の便利な焙煎器もあわせてご紹介します。

「家で、しかも鍋で焙煎ダサくない?美味しくなるはずないでしょ」なんで思っているそこのアナタ!

いざ実践してみたら焼きたての香りと味に感動し、その先入観180度変わりますよ^^!

※当店でも少量100g単位で生豆販売をしています

【生豆販売】各種100g | あしたも焙煎

焙煎に使う道具と手順

必要な道具

焙煎に必要なものは、普段キッチンで使うような下記の道具だけです。

用意する道具
  • 片手鍋(雪平鍋)またはフライパン
  • 木ベラまたは菜箸
  • ザル
  • うちわまたはドライヤー

これらの道具とコーヒー生豆があるだけで焙煎を行うことが出来ます。

下記のように焙煎の手順はとても簡単シンプル。

焙煎の手順
  1. 片手鍋やフライパンに生豆を入れる
  2. 弱火で加熱しながら、豆を焦がさないよう絶えずかき混ぜる
  3. 好みの焙煎度合いで火を止めて、ザルに移して冷ます

このようにコーヒー焙煎は日頃のお料理と同じで素材を焼くだけなのです。

豆の投入量は鍋のサイズにもよりますが、50~100gあたりの少量が焼きやすいです。

投入量が多すぎると焼きムラになったり失敗につながりやすいので、まずは少量で試すのがオススメです。

 

どの程度焼いて味を決めるのかは、音と色と香りで判断します。

まずはコーヒーの香味が酸っぱくなく苦すぎず、酸味とコクがバランスよく味わえる「中深煎り」を目指して焼くと良いと思います。

中深煎りは「2ハゼ」まで焼く必要があります。

焙煎作業の流れ

さて!実際にコーヒー豆を焼いていきましょう。

私の場合はガラス蓋つきの鍋で煽るようにして焙煎しています。

火力は弱火~中火で一定にしたまま焙煎し、投入した豆を焦がさないように鍋を振ったり、ヘラや菜箸で豆をひたすら撹拌し続けます。

火にかけてから3分前後で豆内部の水分が蒸発しはじめて、青臭いような豆の香りがしてきます。

5分ほど経過すると豆はだんだん黄色っぽく変色していきます。

適切な火力であれば約8~10分ほどで豆からパチパチと音が聞こえたら「1ハゼ」の開始です。

この段階ではまだ豆は薄茶色で少ししわの入った状態で、酸味が強い「浅煎り」「中煎り」です。

1ハゼから更に約2分~2分30秒後まで焼き進めると、豆からピチピチと「2ハゼ」の音がしてきます。

この2ハゼ開始から1分30秒前後で「中深煎り」となりますので、ここで火を止めてザルに豆を広げて団扇や扇風機、ドライヤーの送風などで一気に冷却しましょう。

このとき豆の温度は200℃手前まで上昇しているので、すぐ冷却しないと焙煎がどんどん進んでしまいます。

豆が常温まで冷めたら保存用の瓶やジップロックなど密閉できる容器に移し作業完了です^^!

 

ちなみに2ハゼの後も更に焙煎を進めていくと、豆の表面には油分がしみ出でてきて照り照りの状態になり「深煎り」になります。

この深煎り時は炭化にむかって一気に温度上昇するので、鍋蓋の開閉で温度上昇を緩やかにしたり、火力をやや落とす等の注意が必要です。

時系列で焙煎時の変化例を下記にまとめてみました。

焙煎時の変化例
  • 焙煎開始~、豆は緑色のまま
  • 3分経過~、豆に熱が伝わり水分が蒸発し始める、青臭い香り
  • 5分経過~、豆が黄色っぽく変色、チャフが剥がれ、豆の収縮も確認できる、豆温度は150℃付近
  • 8分経過~、パチパチと1ハゼ開始、豆温度は175℃付近で薄茶色、甘く香ばしい香り、浅煎り・中煎り
  • 11分経過~、ピチピチと2ハゼ開始、豆温度は200℃付近で茶色、深みのある香ばしさ、中深煎り
  • 13分経過~、2ハゼピーク経験、豆は油分が染み出たこげ茶色、目に染みるような煙、豆温度は215℃付近、深煎り

ザックリですがこんな感じで豆は変化します。

焙煎中は、豆の色・音・香りの変化をダイレクトに感じられるのが醍醐味です。

特に1ハゼ以降の焼いている最中の甘く香ばしい香りには癒され興奮するはずです☆彡

自分だけのオリジナル焙煎をぜひ体験してみて下さい^^!

狙った味にしたり安定した焙煎を再現するためには、感覚やコツを掴むために練習が必要です。

ただ、自分で焼いた豆は、例え焼きムラがあっても、焦がすなど失敗してしまっても、格別に美味しいはずですよ☆彡

注意点

焙煎時は煙が出るので、必ず換気扇を回す・窓を開ける、またはご近所さんに迷惑が掛からないのであれば屋外で焙煎するなどしましょう。

深煎りでは特に煙が大量発生し火災報知器がなったりするので、キッチン以外の報知器のある部屋の扉を閉めて空間を遮断するなど工夫をしましょう。

生豆は焙煎をすると水分など成分が抜けて約20%軽くなります。例えば、100g焼き上げたい場合は120gの生豆を投入しましょう。

綺麗な豆を焙煎するコツ

さて、何度かチャレンジしてみると片手鍋でも格別に美味しい豆が焙煎できることを実感できると思います。

もし、焼き上がった豆同士の色がバラバラで焙煎ムラが生じてしまう・・・

あるいは焙煎した豆の香味がぼやけて物足りないとか、渋みが凄い気がする・・・

こんな時は下記の原因が考えられるので対策として取り入れて実験してみて下さい。

焙煎ムラ

綺麗に焼き色が揃った焙煎をするためのアプローチとしてはいくつか考えられます。

撹拌

最大の改善方法として考えられるアプローチは、それぞれの豆に可能な限り均等に熱カロリーを与えられるように撹拌する事です。

鍋焙煎の場合は3~5秒おきに豆を箸やヘラで混ぜたり鍋を振り、一部分だけに偏って熱が入らないように撹拌します。

ただし、鍋を水平にゆらして豆を撹拌させようとすると豆同士が水平移動するだけで十分に撹拌できない可能性が考えられます。

ですので、鍋の底側の豆と表面側の豆がしっかり入れ替わる形で撹拌が出来るよう、当店では中華鍋を煽るようなイメージでの撹拌をしています。

ハンドピック

しっかりと撹拌が出来ていても色むらが発生する要素があり、ハンドピック(焙煎に好ましくない豆の除去)を行う事で対策が出来ます。

例えば、サイズ(大きさや厚み等)が大きく異なる豆が混在していると、小さな豆は大きな豆よりも早い段階で豆内部の水分が抜けて焙煎が進んでいきます。

よって、あまりにもサイズ感の違う豆があれば除去することで焼きムラを減少させることが出来ます。

また、色が付きにくい欠点豆(未成熟豆や死豆)が混ざっていると焼きムラが生じます。

これは栄養価の不足した豆に熱を与えても、豆が含有する「糖(ショ糖)」や「タンパク質(アミノ酸)」が少ないためにメイラード反応、「糖」に関してはカラメル化が進まないという現象になってしまいます。

このような豆は焼き上がっても味のない、味の薄い豆、になります。

この欠点豆は焙煎前の生豆ハンドピック時には気づけないものも多いので、焼き上がってから「白っぽい、黄色、肌色っぽい色の豆」を除去するしかありません。

火力

しっかり撹拌を行い、サイズが大きく異なる豆や欠点豆をハンドピックしても焼きムラが生じることがあります。

可能性としては、同サイズの豆に見えても豆ごとの硬さや水分含有量にバラつきがあり、それが原因で焙煎ムラが生じる可能性があります。

この対策としては下記2点が有効かと思います。

①1ハゼまでの水分抜きをゆっくり行う(火力を抑える)

この方法は焙煎開始から1ハゼ前までの火力をやや抑え、時間をかけてゆっくりと豆に熱を加える方法です。

じっくり豆内部の水分を抜きながら撹拌が行えるので、比較的均一に熱を入れやすくなります。

例えば普段8分で1ハゼが来るところを、1ハゼが12~13分などで来るように豆に熱を入れるというイメージです。

②ダブル焙煎

もう一つは少し手間のかかる方法ですが、焙煎を2回に分ける方法です。

まずは1ハゼに入る手前(ハゼる前の豆が肌色のあたり)まで通常通り焙煎を行うのですが、そこで一度火を止めて豆を常温まで急冷します。

その冷めた豆をもう一度最初から焙煎することでも均等に水分が抜きやすくなります。

また2度目の焙煎時には豆内部のハニカム組織がやや脆くなっているので、熱がしっかり通りやすくなった結果、焼きムラを防いだり内部の生焼けも防ぐのに有効です。

それと、ダブル焙煎は浅煎りなどでもしっかりと豆のしわが伸びてツヤがあるような見た目に仕上げることが出来ます。

 

あと傾向としてはオリエンテのようなナチュラル精製の豆は、ウォッシュド精製の豆よりも水分含有率のバラつきが多いのでムラが発生しやすいという点もあります。

ある程度の焼きムラは、言い換えればわずかに異なる焙煎度のブレンド珈琲になるので、複雑さや広がりのある香味のコーヒーとなり美味しいと思います☆彡

香味がしっかり出す

基本的に、短時間で適切に焼くことが出来れば豆の個性・香味は強くなります。

一方で、焼き上がった豆色はいつも通りなのに、香味が弱かったりボンヤリしたコーヒーになってしまう事があります。

原因としては、1ハゼまでの火力が弱くて豆の化学反応がしっかり起こせていない、全体の焼き時間が長めになってしまって香味成分が抜けてしまっている事などが考えられます。

ただ、ハゼ以降(特に2ハゼ)の火力を少し落として豆の温度上昇をやや落ち着かせてあげる事で、香味をマイルドな仕上がりにすることも出来ます。

渋みやエグミを抑える

焼き上がった豆が渋みやエグミがある印象になる場合があります。

原因としては、内部までしっかり熱が伝わらず生焼け(芯残り)が起こって酸味・渋みが出ている事が考えられます。

先ほど同様に、火力が弱すぎる場合は豆内部に水分が残ってしまっていたり、火力が強すぎる場合は豆表面だけが焼けて中心部分は実はしっかり焼けていないという事があります。

まずは一定の火力で8~12分程度で1ハゼが来るように調整し、焼き上がった豆を割った際に豆が均一の色で焼けているのか観察してみると良いです。

もっと簡単!家庭用焙煎器

鍋やフライパンを使ったコーヒー焙煎を紹介しましたが、「もっと簡単に焙煎したい」「道具をそろえて本格的に楽しみたい」そんな方には、家庭用焙煎器もおすすめです。

ごま・銀杏焙煎器

先ほどの片手鍋やフライパンの焙煎よりも少量の豆を入れて焙煎が出来ます。

30~50g程度の少量焙煎をするならこの小型焙煎器がオススメです。

ちなみに全体が網で出来ている手網焙煎器は火力調整が難しく、豆の表面だけ焦がす(芯残り)失敗もしやすいです。

一方、このごま・銀杏焙煎器は底の部分が鍋状で天井部分だけが網になっているので、豆に均等に適度に熱を入れやすいので綺麗に焼けます。

私が最初に焙煎をし始めたときは、この小型焙煎器を使って練習していました。

手回し焙煎器

手で鍋などを振る焙煎は疲れますが、回すタイプはちょっとラクです^^♪

少し多めの豆(200~400gほど)を手首や腕に負担をかけずに焙煎するのにオススメです。

網で出来ていますが火加減や回転数にちょっと気を付ければ、焼きムラもなく綺麗に焼きやすいです。

直火式なのでガツンとした香味は出しやすいです。

鍋焙煎と異なり焙煎中にチャフが飛散してコンロの火で着火してしまう事が多いので、火事には注意が必要です。

燃え上がりやすいフリースなどを着ての焙煎は絶対避けましょう・・・

ちなみに網が四角形の形状やドラム状になっているものなど種類があります。

私は網ドラム式の焙煎器に金属板を巻いて改造した「自作の半熱風式焙煎器」をときどき使用しています。

小型自動焙煎器

焼きムラなく安定した焙煎がしやすい家庭用小型自動焙煎器。

焼き加減を機械に任せて気軽に安定した焙煎をしたい方にオススメです。

ボタン一つで焙煎が自動で完了するものや、温度やプログラムをカスタム設定できるタイプなどがあります。

火加減や時間管理が基本的には不要なので毎回安定した味が作りやすいです。

電気の熱風式になるのでライトな飲み口で香りのよい焙煎がしやすいかもしれません。

焙煎はどうしてもキッチンで20分ほど付きっきりで作業しなければなりませんが、自動焙煎器なら忙しくても「ながら焙煎」が可能です^^!

さいごに

焙煎はハードルが高いと思われがちですが、実はとっても身近な“おうち趣味”のひとつ。

あなたも気軽にチャレンジしてみませんか^^?

ちなみに、焙煎3日後あたりの方が豆内部の二酸化炭素ガスが出て、尖った味が落ち着き香りやコクの深みも前面に出てきて一番良い香味になったりします。

※浅煎り・中煎りだと豆の組織が硬いので数週間たった方が美味しい状態だったりします。

 

とはいえ焙煎したての豆を味わえるのは焙煎した人だけの「特権」です。

焙煎直後のワイルドなコーヒーの香りと味わい、それもまた格別。

ぜひおうち焙煎を楽しんでみて下さい^^!

それではまた☆彡

※下記では、鍋で温度測定しなが焙煎した際のグラフ(プロファイル)も紹介しています。